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How do L1 and proficiency level influence L2 written production?

 7月20〜23日にイギリスのランカスター大学で開催されたTeaching and Language Corpora (TaLC) 2014において、"How do L1 and proficiency level influence L2 written production?"という発表をしてきました。*1
 近年、習熟度に関する様々な指標が提案されており、それらを用いた学習者のパフォーマンスの評価がなされています。しかしながら、同じ習熟度の学習者であったとしても、母語によってパフォーマンスが異なる可能性があります。
 本研究の目的は、東アジア圏の大学生によって書かれた英作文を対象に、語彙、品詞、統語、談話などの様々な観点から、学習者の習熟度と母語が第2言語ライティングに与える影響を調査することです。また、どのような言語項目が大きな影響を及ぼすのかを特定することも目的としています。
 分析対象としては、ICNALEにおける香港人学習者 (HKG),韓国人学習者 (KOR),台湾人学習者 (TWN),日本人学習者 (JPN) のデータ(2,000人)を用いました。このデータには、CEFR (Common European Framework of Reference for Languages) に基づく5段階の習熟度情報が付与されています。
 58種類の言語項目を変数する対応分析と階層型クラスター分析 *2 を行ったところ、分析データにおける20の学習者グループは、(1) 全ての香港人学習者、C1レベルの韓国人学習者、C1レベルの日本人学習者、(2) A2〜B1_2レベルの日本人学習者、(3) B1_2〜B2レベルの韓国人学習者、B1_2〜C1レベルの台湾人学習者、(4) A2〜B1_1レベルの韓国人学習者、A2〜B1_1レベルの台湾人学習者、という4つのクラスターに分類されました。

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 このクラスタリング結果によると、第1クラスターがHKG、第2クラスターがJPN、第3クラスターと第4クラスターがKORとTWNとなっており、東アジア圏の学習者による英作文では、習熟度による影響よりも母語による影響の方が大きいことが示唆されています。その一方で、KORとTWNに関しては、母語ではなく、習熟度での分類がなされていることも興味深いと言えるでしょう。
 次に、クラスカル・ウォリス検定を用いて、上記の4つのクラスター間で使用頻度の差が大きい言語項目の特定を行いました。そして、頻度差の大きい言語項目と各クラスターの関係を調査した結果、HKGの英作文にはnominalizations, conjuncts, predictive modalsといったアカデミック・ライティングに相応しい言語項目が,JPNの英作文にはfirst person pronouns, private verbs, present tense, independent clause coordinationといった話し言葉に顕著な言語項目が,KORやTWNの英作文にはindefinite pronouns, emphaticsといった言語項目が高頻度であることが明らかにされました。

  • Yuichiro Kobayashi & Mariko Abe (2014). How do L1 and proficiency level influence L2 written production? Abstract Book of TaLC 11, pp. 49-50. PDF
  • 林雄一郎阿部真理子・成田真澄 (2013). 「書き手の習熟度と母語が第2言語ライティングに与える影響」 『人文科学とコンピュータシンポジウム論文集―人文科学とコンピュータの新たなパラダイム』(pp. 89-96). 東京: 情報処理学会. PDF

*1:TaLC 2014のアブストラクト集は、学会ウェブサイトで全文公開されています。

*2:ガウエル距離とウォード法を用いました。